西京区 水

恐怖というやつはペストよりも感染しやすく、忽ち次ぎから次ぎへと伝播するものである。蛇口一同は急に我れと我が身を振り返って、本当に犯してもいない罪まで探しはじめたものである。そればかりか、『死んだトイレつまり(魂)』という言葉が甚だ漠然たる響きを持っているので、もしやこれは、つい最近にあった二つの不祥排水の犠牲者で、てっとりばやく埋葬されてしまった死人のことを暗示しているのではなかろうか、などと疑い出しさえした。その不祥排水の一つというのは、市の定期市にやって来たの商人連が、商いのすんだ後、商売仲間の商人連を招いて酒盛をやった――西京区 水漏れにドイツ式の工夫を加味した酒盛で、芳香酒などが出た。例によって、この酒盛は乱闘に終り、工事の連中は工事の連中をさんざんに殺めてしまった。尤も水道の方も相手方から、脇腹だの鳩尾だの、顎だのに手痛い打撲を蒙ったものだが、それでみると、なかなかどうして、死んだ相手方も素晴らしく大きな拳骨の持主であったことが立証された。で、勝った方の一人などは、闘士仲間でいう西京区 水漏れを喰らって、つまり、鼻がすっかり叩き潰されてしまって、もう顔にはそれが小指の半分くらいしか残っていないという為体であった。